国王陛下の独占愛
駆け込んできたニクラスは、部屋の中の雰囲気に少し戸惑った様子を
浮かべたが、すぐに母親の元へ駆け寄ると、クルリとソリの方を振り返り
にっこりと笑顔を浮かべた。
「ソリ、今日はどんなお茶を煎れてくれるの?」
ニクラスの無邪気な問いに口を開いたのは、アミラ妃だった。
「ニクラス、この者はお茶は煎れないと言っている。
陛下にしか、お茶は煎れられぬそうだ。」
「えっ、ソリ?そうなの」
顔を曇らせ、そう自分に尋ねるニクラスに、お茶は煎れられないと言うのを
ソリは少しためらった。
美しいが高飛車にものを言うアミラ妃にお茶を煎れたいとは思わないが
身体の弱いニクラスには、体調を考えたお茶を飲ませてあげたかった。
今も、眉間の間が白く、唇が赤く見えるのは、少し熱があるからでは
ないだろうか。
そう思ったが、ソリは静かに首を振ると、
「すみません、殿下、陛下と約束したのです」
と言った。
ソリの言葉を聞いたニクラスは、視線を床に落としたが、しばらくして
顔をあげると、きっぱりとした声で言った。
「では、僕から兄上にお願いするよ、一度だけ許してほしいって
すぐに、兄上に使いをやる、だから、今日はここでお茶を煎れて」
そこまで言われては、ソリはもう断ることができなかった。
「わかりました」