国王陛下の独占愛
しばらくして、再びテーブルの上になにか置かれる音に気付き、
窓の方を見ていたセヴェリは視線をテーブルにもどした。
テーブルの上には、香ばしい良い匂いのする薄い半月型のパンに、
野菜と焼いた卵がそえられている。
ずっと気になっていた香ばしい匂いはこのパンのものだったのかとセヴェリは思った。
「それからこれは、お客さんのために煎れたお茶。」
そう言って、パンと野菜の入ったお皿のとなりに、
ソリと呼ばれた娘がカップを置く。
とろりとした濃い緑色の、何かわからないお茶だった。
「お客さん、二日酔いでしょ。お酒の匂いがプンプンする。
それも昨日の晩だけじゃない、深酒をいつも続けてる。」
目の前の娘からでた言葉に、セヴェリは顔をあげて娘を見た。
薄い藤色の瞳が、まっすぐにセヴェリを見ている。
「なんだ、まるで医者かなにかのような口ぶりだな。」
「そんなのお医者でなくてもわかるわよ、しかも楽しいお酒じゃない、
きっと苦痛をまぎらわすためのお酒だわ。」
セヴェリの眉がピクリと動く。
まるで見ていたかのような、娘の確かな口ぶりに胸の痛いところを突かれたような気がして
セヴェリはむっとした。
「私が、どう酒を飲もうと、お前には関係無い。」
「あら、わたしのペルカを食べようっていうお客さんだもの、
美味しく食べてもらいたいじゃない。
だから、騙されてと思ってそのお茶を飲んでみなさいよ。」