国王陛下の独占愛

   「どうされましたか、母上」


 歩み寄ってきたのは、国王セヴェリと国王付き武官のトゥーレだった。

 歩いてきたセヴェリは言葉を失って、セヴェリを見つめるだけの
 アミラ妃から目をそらすと、ソリをちらりと見て口を開いた。


   「この者は、私のための薬師です。私のためだけにお茶を煎れるように
    と命じたのに、母上やニクラスにお茶をいれているとは」

   「兄上、それは僕が......」


 ニクラスがそう言いかけたが、それを片手を上げて止めると、
セヴェリは今度はアミラ妃を見やって、言葉を続けた。


   「命令を守らぬ者にすぐに罰を与えますので、この者は連れて行きます」


 そして、そう言うが早いか、セヴェリはうつむいて立ってたソリの手首を握り
 先に立って歩き出す。

 その後を、アミラとニクラスに向かって礼をしたトゥーレが、追いかけていき
 呆然と目を見開いているアミラ妃とニクラスが残された。

        *
        *
        *
        *


 ソリの手を引っ張りながら、セヴェリは足早に歩いていく。

 そのせいで、ソリは小走りになった。

 庭を突っ切り、もう一つの別の大きな庭も突っ切ってセヴェリは歩いていく。

 そして水を湛えた甕のある泉のところまでくると、勢い良くソリの手を
 水の中に突っ込んだ。


   「熱いお茶がかかっただろう、冷やすんだ」


 自分の服の袖口が濡れるのもかまわず、ソリの手首を掴んだまま
 水の中に手を入れていたセヴェリは振り返りもせず、大きな声をあげた


   「トゥーレ、すぐ火傷の薬をもらってこい」
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