国王陛下の独占愛
「どうされましたか、母上」
歩み寄ってきたのは、国王セヴェリと国王付き武官のトゥーレだった。
歩いてきたセヴェリは言葉を失って、セヴェリを見つめるだけの
アミラ妃から目をそらすと、ソリをちらりと見て口を開いた。
「この者は、私のための薬師です。私のためだけにお茶を煎れるように
と命じたのに、母上やニクラスにお茶をいれているとは」
「兄上、それは僕が......」
ニクラスがそう言いかけたが、それを片手を上げて止めると、
セヴェリは今度はアミラ妃を見やって、言葉を続けた。
「命令を守らぬ者にすぐに罰を与えますので、この者は連れて行きます」
そして、そう言うが早いか、セヴェリはうつむいて立ってたソリの手首を握り
先に立って歩き出す。
その後を、アミラとニクラスに向かって礼をしたトゥーレが、追いかけていき
呆然と目を見開いているアミラ妃とニクラスが残された。
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ソリの手を引っ張りながら、セヴェリは足早に歩いていく。
そのせいで、ソリは小走りになった。
庭を突っ切り、もう一つの別の大きな庭も突っ切ってセヴェリは歩いていく。
そして水を湛えた甕のある泉のところまでくると、勢い良くソリの手を
水の中に突っ込んだ。
「熱いお茶がかかっただろう、冷やすんだ」
自分の服の袖口が濡れるのもかまわず、ソリの手首を掴んだまま
水の中に手を入れていたセヴェリは振り返りもせず、大きな声をあげた
「トゥーレ、すぐ火傷の薬をもらってこい」