国王陛下の独占愛
ソリは真剣な顔で水の中に入れた手を見ているセヴェリの顔をみやった。
そしておずおずと口を開いた。
「陛下、すみません。
約束を破ってお茶を煎れたことを、お詫びします」
「いや、いい。ニクラスからの伝言は受け取っていた。
ただ、火傷した手を冷やしたかったから、ああ言ったまでだ。」
泉のそばにソリとともに座り込んだセヴェリはトゥーレが持ってきた
火傷の薬である、浸けたムルカの葉を赤くなったソリの親指の付け根に
貼り付けながら言った。
「この葉を貼り付けてしばらくしてから、この塗り薬を塗る、
これが、良く効く」
「よくご存知なんですね」
「幼い頃はよくこの薬の世話になったからな」
その言葉を聞いて、この人は随分とやんちゃな子供だったろうと思った
ソリは、ふっと頬を緩めた。
「なんだ、なにが可笑しい?」
「いいえ、なんでもありません。それより後は自分でできます」
ソリがそう言ったのに、セヴェリは寛いだ様子であぐらをかくと、ソリの手を
持ったまま、膝の上に手を乗せ、空を仰ぎ見た。
ソリが、何か言いたげにセヴェリを見ても、知らんぷりだ。
手も離してくれそうでない。
だから、ソリは黙ってされるがままにした。