国王陛下の独占愛
セヴェリに夜のお茶を出し終えて、ソリはセヴェリの部屋をでた。
最初のうちは帰りも案内の者がついたが、ソリが慣れたとみると
案内の男はついてこなくなり、ソリは小さな燭台の明かりをたよりに
一人、家路を急ぐ。
幸い、西門の隣にある小さな木戸からでて、坂を下れば家はすぐそこだ。
燭台とかごを手に、西門へとむかうソリは空を見上げた。
今日は月もなく、雲も多いせいか星明かりも少ない。
見上げていた顔をもとに戻し、急ごうと小走りになりかけたところで
ソリは後ろからグイと腕を引かれ、片手を強く背中に捻りあげられた。
そして、冷たくて硬いものが首筋にあてられる。
それがナイフだとわかり、ソリははっと息をのんだ。
「騒ぐな、静かにしていろ」
耳元でくぐもった声がする。
ソリの腕を捻りあげている男は、どうやら口を何かで覆っているらしかった
男は、ソリを建物の陰に引きずっていき、通路から離れたところにある
道具倉の中へソリを押し込んだ。
自分も倉の中に入りソリから手を離した男は、しばらく戸の隙間から
外の様子を伺っていたが、しばらくするとナイフをソリの方へむけ
くるりと振り返った。
城に勤めるものがよく着ている服に身を包んだ男の顔はわからない。
顔半分を布で覆っているからだ。
男は、布に覆われていない、鋭い目でソリを見て問うた。