国王陛下の独占愛
「そんなもので脅されても、私はやりません」
目の前のナイフの向こうにある男の顔を睨めつけながら、
ソリが言うと、男の目が、可笑しそうに細められた。
「お前が断ることで、命を落とすのはお前じゃない、
お前の祖父だ」
「お祖父様......」
「そうだ、お前が家に帰り着いて目にするのは、
血まみれの祖父の姿だろうな」
ソリはすぐに走りだそうとした。
祖父が危ない。
だがすぐに男に肩を掴まれ、グイと押し戻される。
「おっと、そんなに急ぐなって。まずは返事を聞かせてもらおうか
今度は前とは違う返事をな」
弱いものをいたぶるような声で男が言う。
ソリはぎゅっと唇を噛んだ。
どうしたらいいだろう。
ことわれば、祖父の命が危ない。
だが、承諾すれば、国王に毒を盛ることになる。
「まずは、二回分だ、これを三日に一度ずつ飲ませろ」
黙ってしまったソリの手を無理やり開かせ、男が銀の包みを握らせる。
「また会いに来る。もし、断れば命がないのは祖父だということ
を忘れるな、もし、お前が誰かにこのことをしゃべってもだ」
それだけ言うと男は、道具倉から出て行った。
銀の包みを握ったまま、唇を噛み、ソリは暗い道具倉の中に
立ちつくした。