国王陛下の独占愛
セヴェリの不機嫌さに動じることもなくそう言う娘から視線をはずし、
テーブルの上のカップをつかむと、セヴェリは熱いお茶を一口飲んだ。
そして、もう一口、それから、もう一口。
薬草だろうか。
独特の香りが鼻を抜けていき、熱い液体が確かな力をもって、体に染み渡っていく気がする。
セヴェリの顔つきが変わったのを見て取ったソリはにっこりと笑った。
「お茶を飲んだら、ペルカも食べてみて、野菜と卵をはさんでね。」
そう言い置いて、ソリは厨房へと戻っていく。
セヴェリはじっとカップの中を見た。
ソリの言った通り、苦しみを紛らわすための酒は、
一時何もかも忘れさせてくれるが、
ばらばらにした苦しみの破片を体にも心にも残す。
体と心に澱のようにたまったそれを、この一杯のお茶がゆるやかに溶かしていくようだった。
お茶を飲み干したセヴェリはパルカにも手をつけた。
野菜と卵をはさんで、がぶりと噛み付く。
「うまい」
思わず唸り声がでた。
なんの香草だろう、練り込んであるものが良い風味をだしている。
夢中でたいらげて、はっと気づくと、店の中の客はセヴェリ一人になっていて
ニヤニヤ笑いをうかべた、女将とソリがセヴェリを見ていた。