国王陛下の独占愛
ネヴァド=ヴィラの王都、ルヴァドは城下に扇状に広がる
城下町だ。
その町の真ん中には、大小様々なテントを立てて、市場が開かれている。
だが、その市場は古くからのもので、周囲を店舗や住居に囲まれ、
もうそれ以上は広がることができない。
近年、工業が発達したネヴァド=ヴィラの流通をもっと活発な
ものにするべく、国王になったセヴェリが取り組んだのは
王都の西側に新しい市場をつくることだった。
だから今、王都ルヴァドの人の流れは、中央市場と西市場の二つに分かれている。
それによって、慢性的だった中央市場の混雑が解消され、人も荷馬車も
スムーズに行き来できるようになった。
ソリはそんな王都の中央通りをとおり、中央市場に来ていた。
新しい西市場に行くことも考えたが、求めている薬木の実は、昔からある
中央市場にある気がしたからだ。
だが、中央市場には求めている薬木の実はなかった。
西市場の方へまわろうと、薬種屋からでた道を西へたどろうとした
ところで、ソリは肘をつかまれて、建物と建物の間の路地に引っ張り込まれた
覆面の男にひっぱり込まれたのだとソリは思った。
何かひんやりするものが、身の内に湧き上がる。
だがすぐに、それに負けんまいと自分を掴んでいる腕を振り払い
ソリは側に立つ男を睨みつけた。
「どうしたんだ、そんな怖い顔をして」
睨みつけた先に見えた顔と声を聞いて、ソリはポカンと口を開けた。
ソリの腕を引っ張ったのは、セヴェリだった。
側にトゥーレもいる。