国王陛下の独占愛
「西市場に行く前に、面白いものを見に連れてってやる」
そう言って、セヴェリはふりむくと、トゥーレに何事か耳打ちをした。
トゥーレは”わかりました”というように、セヴェリに向かって軽く頭を
下げると、足早にその場を去って行く。
その背中を見送りながら、
「城でのお仕事はよろしいのですか?」
とそうソリが問いかけると、セヴェリは可笑しそうに、ニヤリと笑った。
今頃、主のいなくなった執務室で、パルヴォが茶葉を手に
呆然としていることだろう。
笑うセヴェリの顔を不思議そうに見ているソリの視線を外して、セヴェリは
ソリの手を掴むと、さっさと歩き出した。
中央市場の真ん中を突っ切るようにのびている中央通りをセヴェリはソリの
手を引きながら人混みをぬって歩いていく。
やがて、中央通りを右に折れ、路地に入り、その路地も右に左にと曲がり
周りにはもう店など一軒もないようなところに出た。
粗末な家が並ぶ、人通りのない道の間に建てられた2階建の納屋のような
建物の前までくると、セヴェリはソリをふりかえった。
「ここだ」
すぐに、どこからかトゥーレがやってきて、短くセヴェリの耳に何事か
を告げ、建物の中に入っていく。
トゥーレが入っていった入り口に、セヴェリはソリの手を引いたまま
近づくと、入り口の横にある小さな小窓にむかって声をかけた。
「やっているか」
「ああ、やっているとも」