国王陛下の独占愛

 姿は見えないが、小窓の向こうからは、ひどくしわがれた声がした。


   「二人なら、130ペイソだよ」


 セヴェリが懐から出した巾着からお金を払うのを見て、ソリは慌てた。


   「自分で払います」

   「いや、いい」


 短くそう言い、セヴェリはソリをつれて、建物の中へ入った。

         *
         *
         *
         *


 建物の中は本当に大きな納屋のように、下はむき出しの地面だった。

 そして、その地面の真ん中を丸く開けて、囲うように板を打ち付けた柵が
 ぐるりと丸く取り巻いている。

 そしてその柵の周りに、何人もの男たちが(少しは女や子供らしき者も
 いたが)取り巻いている。


   「ここは、何をするところですか?」

   「ここは、闘鶏場だ、時々たちの悪いやつらが牛耳っているときが
    あるから、トゥーレに下見に行かせた。
    今日は大丈夫のようだ」


 周りの男たちは、中には貴族らしい格好の者もいるが、大半が労働者
 の格好をしている荒くれた男たちだ。

 唾を飛ばして大声でしゃべり、中には酒ビンを抱えているものもいる。

 どこが大丈夫なんだろうとソリは思ったが、横で目を輝かせている
 セヴェリを見ると、何も言えなくなった。

 変わった人だソリは思う。
 
 一国を統べる国王なのに、こんなところにいて喜んでいる。


  
< 55 / 125 >

この作品をシェア

pagetop