国王陛下の独占愛
「中央にかごがあるだろう、あの中に鶏がいる」
セヴェリがそう言うので、ソリは精一杯伸びをして前を見ようとした。
だが、目の前に壁のような大男がいて、見えない。
「見えないか、よく見えるところまで移動しよう」
セヴェリがそう言い、ソリの手をひっぱって歩きだす。
さっきから、ずっと手を握られていて、ソリは落ち着かなかった。
胸の鼓動が苦しくて手を離したいとも思うが、そうしてしまえば後悔する
ような気もする。
それにこんなところで手を離しては心細い気がして、ソリは繋いだ手に
そっと力をこめた。
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前の人がしゃがんでいて、闘鶏場がよく見渡せるところに連れてこられ、
すぐ横にセヴェリが立つ。
するとすぐに、大きな腹を突き出し、鼻の頭を赤くした男が、鐘を
打ち鳴らしながら闘鶏場の中央にあらわれ、辺りが少し静かになった。
赤鼻の男が、ダミ声で前口上の述べ、かごの中から二羽の鶏を取り出す。
一羽は黒っぽい羽の鶏で、もう一方は赤茶色だ。
しばらくすると、短いチョッキを着た痩せた男が、黒と赤の紙を持って
場内をまわりはじめ、賭けをする人は、そのどちらかの紙をお金と交換
しているようだった。
「黒い鶏が勝つと思えば黒い紙、赤茶の鶏が勝つと思えば赤い紙」
そう呼びまわっている。