国王陛下の独占愛
場内を三回ほど回っていた痩せた男が引っ込むと、赤鼻の男が
再び鐘を打ち鳴らし、騒がしかった場内が静かになる。
熱を孕んだ緊張感が建物の中に満ちている。
皆誰もが、中央の二羽の鶏を見つめていた。
「ハイヤー!」
勇ましい赤鼻の男の掛け声で、二羽の鶏を掴んでいた手が離されて、
鶏がばさばさと羽をひろげ、闘鶏が始まった。
二羽は、大きく羽をひろげ、相手を威嚇しあったかと思うと、
お互いが鋭い鉤爪を前に出し飛びあった。
けたたましい鶏の鳴き声に、自分の賭けている鶏を応援する声、
囃し立てる声、闘鶏場の中は騒然となる。
ソリもいつの間にか、握りこぶしに力を入れ、闘鶏に見いっていた。
赤茶の鶏の一撃、一撃に、つい身体に力が入る。
そんなソリの様子を見て、セヴェリは満足げに微笑んだ。
戦いは思ったよりも長引いたが、赤茶の鶏の攻撃に黒い鶏がとうとう
逃げ出し、勝負はついた。
赤鼻の男の宣言に、わっと歓声があがる。