国王陛下の独占愛
薬草をより分けていた手を止めて、ソリはしばし宙に視線を
彷徨わせる。
そして、ゆっくりと首を回し、窓下に置かれたチェストを見た。
しばらくそうしていたソリは、薬草を置いたテーブルから離れ
ゆっくりとチェストに歩み寄った。
チェストの一番上に引き出しを開け、その奥にしまわれた
四角い箱をとりだす。
蓋をあけてソリはじっとその中のものを見つめた。
箱の中には銀色の小さな包みがいくつか入っている。
目の鋭い覆面の男に渡される包みだ。
男に渡される毒薬をソリはすべてここにしまっていた。
最初は心が揺らいだ。
薬を使うことも考えた。
だが、ソリはどうしてもそれができなかった。
あの人に自分が毒を盛ることなどできない。
自分の与えた毒で弱っていくセヴェリを見ることなどできない。
だが、命令に従わなければ、祖父の命が狙われる。
だからソリは嘘をつき続けた。
毒は遅効性のものだから、うそをつくことは可能だ。
だが、それはいつまでも続けられるものではない。
近いうちに嘘はばれるだろう。
どうしたらいいの?
もう何度目になるかわからない問いを胸の内で、ソリは呟く。
しゃがみこみ、俯いたソリの近くに飼い犬のシルバーが近づいてきて
ソリの苦悩を労わるように、そっとソリの手を舐めた。