国王陛下の独占愛
 
   「どうしたの?」

   「あぁ...... いや......」


 からっぽの巾着を取り出したセヴェリを見て、ソリはびっくりした声をあげた


   「もしかして、お金、もってないの?」


 セヴェリは慌てた。

 確かに懐の巾着には金がはいっていたはずだ。

 昨晩、いや、明け方まで飲んでいて....... それで......。


 顔色をなくして、なおも懐を探るセヴェリにソリは
 大きなため息を一つつくと


   「呆れた、お金が無いのに、食事を注文するなんて、
    どうせ、酒代を払って全部使ってしまったのでしょう。
    さっきも言ったけど、深酒するのを続けていたら、
    こうやって人にも迷惑をかけるし、自分の身体だってこわすのよ。

    いいことなんて、一つもないんだから!」


 と大きな声でまくしたてた。


   「そんなんじゃ、......」


 ソリがなおも言い募ろうとした時、ソリの後ろで、落ち着いた声がした。


   「お代は、私が払います。」


 ソリがびっくりして振り返ると、そこには黒髪の背が高い、立派な体躯をした若者が立っていた。


   「トゥーレ! ここがよくわかったな!」


 若者を見て、セヴェリが声をあげる。

 セヴェリの言葉に、トゥーレと呼ばれた若者が答えた。


   「表に、サムソンが繋がれていましたので」


 突然現れた立派な身なりの若者に、ソリは面食らっていた。

 そういえば、パルカを食べたお客も、よれよれでだらしなくはなって
 いるけれど上等な服を着ているとソリは思った。


   「お代はいくらになりますか?」


 トゥーレがソリに尋ねた。


   「60ペイソです」



   
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