国王陛下の独占愛

   「魔術をつかって俺の後をつけたか?」

   「......っ!」


 ソリを押さえつけているのは、覆面の男だった。

 男の言葉にソリは冷水を浴びたような気持ちになる。

 なぜ、わかったのだろう。

 言葉もなく動揺するソリを見て、男が言う。


   「どうやらそうらしいな、では生かしてはおけん」


 そう言って、男がナイフを振りかぶったとき、トゥーレが駆け寄り男の
 腕をつかんだ。

 そしてそのまま二人はもみ合いになり、ソリはそれを見ながらずりずりと
 その場にしゃがみこんだ。

 どうしよう......どうしたらいい。

 逃げなければと思うが足がガクガクと震えて、立ち上がることができない。

 そんなソリの近くでもみ合っていた二人が離れたかと思うと、ナイフが
 ソリにむかって飛んできた。

 すんでのところで、トゥーレの抜いた剣がナイフを弾き、ナイフは高く
 はねあがって、壁にぶつかった。

 その間に覆面の男は逃げ去っていた。

 
< 74 / 125 >

この作品をシェア

pagetop