国王陛下の独占愛
表に出て、白馬サムソンの手綱をといているセヴェリに
トゥーレが言う。
「今回は運良く見つけることができましたが、
場末の酒場で行方をくらますのは
もういい加減にしていただきませんと」
「あぁ、わかっている」
ちょうど手綱をとき終わり、セヴェリは軽く答えると、ヒラリとサムソンにまたがった。
「国王陛下の御耳に入ったら、ただではすみません」
そう言いながら、トゥーレも黒馬にまたがる。
その言葉に片頬をゆがめて笑いを漏らしたセヴェリを見て、トゥーレはため息をおとした。
「どうか、セヴェリ殿下......」
「わかっているさ、こんな気ままができるのも王子のうちだけだ。
父上の死期は近い。
望まぬものがいようがいまいが、次期国王は私だ」
「......」
「そんなことより、トゥーレ、お前はペルカというものを
食べたことがあるか?」
「はい、庶民の食べ物ですが、屋台でも買えますし」
「そうか、だがこの宿屋のペルカは絶品だ。一度食べてみるがいい。
いつか、また、私が連れてきてやろう」
えらそうにそう言うと、セヴェリは満足げに微笑み、宿屋の方を見た。
そして、大きく馬の腹を蹴ると、セヴェリはトゥーレとともに宿屋を後にした