国王陛下の独占愛

 いつもの酒房で、気に入りの女に酌をさせ、上等の酒を飲んでいるのに
 ザクラスは胸の内が晴れないでいた。

 始末するようにと言った薬師の娘は、王の懐深くに匿われ、娘の祖父は
 行方がわからない。

 ”陛下が陰謀を知り隠されたのだ” とザクラスは思った。

 だが、今に至るまで自分のところに捕縛の手はのびていない。

 ということは、あの娘は全てを見たわけではないのだ。

 術はすぐに解けたのだろう。

 あの、盲の占い師もそう言っていた。

 首の皮一枚でつながったな......。

 だが、娘が王の近くにいる限り安心はできない。

 それに......、とザクラスは杯を重ねながら顔を歪ませた。

 弱り切ったセヴェリの姿を見ることだけを、楽しみにしてきたのに!

 弱るどころか、セヴェリは着々と力をつけてきている。

 何もかもが後手に回る前に手を打たねば。

 焦る胸の内をなんとか自分で宥めながら、ザクラスは苦い杯を傾け続けた。
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