国王陛下の独占愛

 ソリが夜会の噂を耳にした頃、アミラ妃もまたお后選びのことを
 聞いて、イライラとする気持ちを抱えていた。

 椅子に浅く腰掛け前かがみになり、イライラと爪を噛んでいたアミラ妃は
 爪を噛むのをやめ大きな声で言った。


   「領相のザクラスを、すぐに呼びなさい」

        *
        *
        *
        *



 久しぶりにアミラ妃に呼ばれ部屋に入ったザクラスは、機嫌の悪そうな
 アミラ妃を見て、深く礼をしながら考えた。

 前王の残したこの妃は、わかりやすい。

 思っていることがすぐ顔にでる。

 上に立つ者としてそれは褒めたことではないが、前王が自分を慰める
 ためだけに娶った妃だ、仕方あるまい。

 呼ばれたのは、国王の后選びのことか。



   「久しぶりですね、ザクラス」

   「はい、アミラ様」

   「ところで、陛下が后選びのために夜会を開くというのは聞いて
    いますか」


 思った通りの言葉がアミラ妃の口からでて、ザクラスはアミラ妃には
 わからぬよう苦笑した。


   「后候補として名が挙がっているのはすべてパルス様の息の
    かかった家ばかり。
    これでもし后がきまれば、パルス殿のおもうつぼではないか
    なぜ、対立する候補をださないのか」


 后を娶ることは仕方ないとしても、アミラ妃は自分の思う通りになる娘
 がいいのだった。

 だが、ザクラスは


   「適当な者がいなかったのでございます」


 と答えた。
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