国王陛下の独占愛
ソリが夜会の噂を耳にした頃、アミラ妃もまたお后選びのことを
聞いて、イライラとする気持ちを抱えていた。
椅子に浅く腰掛け前かがみになり、イライラと爪を噛んでいたアミラ妃は
爪を噛むのをやめ大きな声で言った。
「領相のザクラスを、すぐに呼びなさい」
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久しぶりにアミラ妃に呼ばれ部屋に入ったザクラスは、機嫌の悪そうな
アミラ妃を見て、深く礼をしながら考えた。
前王の残したこの妃は、わかりやすい。
思っていることがすぐ顔にでる。
上に立つ者としてそれは褒めたことではないが、前王が自分を慰める
ためだけに娶った妃だ、仕方あるまい。
呼ばれたのは、国王の后選びのことか。
「久しぶりですね、ザクラス」
「はい、アミラ様」
「ところで、陛下が后選びのために夜会を開くというのは聞いて
いますか」
思った通りの言葉がアミラ妃の口からでて、ザクラスはアミラ妃には
わからぬよう苦笑した。
「后候補として名が挙がっているのはすべてパルス様の息の
かかった家ばかり。
これでもし后がきまれば、パルス殿のおもうつぼではないか
なぜ、対立する候補をださないのか」
后を娶ることは仕方ないとしても、アミラ妃は自分の思う通りになる娘
がいいのだった。
だが、ザクラスは
「適当な者がいなかったのでございます」
と答えた。