国王陛下の独占愛
「本来ならば、今少しニクラス様が年を召されてからと思って
おりましたが、お后が決まるとなれば、早急に手を打たねば
なりません」
そう言ったザクラスにアミラ妃は忌々しそうな顔をすると
「あの娘のせいだ」
と言った。
「あの娘とは?」
「薬師の娘!陛下が側妃にと望んでいるという娘だ」
「陛下が側妃に?」
「おや、知らなかったのか、すでに陛下は自分の居室近くに娘を
置いておられる。
それを、パルス殿が后も決まらぬうちにと騒いで、急にお后選びの
話がでたのだ」
アミラ妃はセヴェリが自分の怒りから娘を庇ったときのことを思い出していた。
あの時、セヴェリは娘を罰すると言ったがそんなものは言い訳だったのだと
アミラ妃は思った。
嫉妬に顔を歪めるアミラ妃をみてザクラスは考えた。
側妃に望むほど、陛下があの娘を気に入っているとは。
確かにそれなら納得がいく。
いくら命を狙われているとはいえ、ただの薬師の娘を陛下自らが
自分の懐深くに匿ったりはしないだろう。
恋心ゆえか......。
ザクロスは内心、ニヤリとほくそ笑んだ。
恋心というものは、その思いが強ければ強いほど弱点にもなりうる。
切り札は何枚もあったほうがゲームは面白いというもの。
アミラ妃の部屋を辞しながら、ザクラスは口許を歪ませ、暗い笑みを
もらした。