国王陛下の独占愛
 
 セヴェリの部屋で薬草を煮立たせながら、ソリはセヴェリを見る。

 セヴェリはいつものように、ソファに座って、本を読んでいる。


   「どうした、随分、不躾に私を見るようになったな」


 本に視線を向けたままで、突然セヴェリがそう言った。


   「......。」

   「どうした、なぜ返事をしない?」

   「返事をする必要などないと思ったからです」


 そう言いながら、ソリはセヴェリの前にお茶のカップを置いた。

 カップを持ち上げ、一口、口をつけたセヴェリが慌ててカップを
 口から離す。


   「ひどく熱いぞ、なんだか最近やたらとお茶が熱くないか」

   「そうですか?しばらく置いておけば冷めます」

 ソリの言葉にセヴェリはカップをソーサーに戻し、しげしげと
 ソリを見た。


   「何を不貞腐れている?」

   「不貞腐れてなどいません」

   「そうか?何か気に入らないことでもあるのではないか」


 セヴェリの問いにソリは黙り込んだ。

 気に入らないこと.....なら、ある。

 お后選びの夜会のことを、セヴェリが何も言わないのが気に入らない。

 もちろん、国王がただの薬師であるソリに言う必要など、どこにもない。

 そう頭では十分すぎるほどわかっているのに、ソリはなんだか胸の内が
 もやもやとしてしかたがないのだった。。

   
< 90 / 125 >

この作品をシェア

pagetop