国王陛下の独占愛

   「如何でございましたか、陛下」

   「そうだな、皆、人形のようだな」


 嫌味をこめて言ったのに、パルヴォは何を勘違いしたのか、
 満面の笑みを浮かべる。


   「そうでございましょう、皆、美しい娘たちばかりで」


 確かに美しいが、セヴェリが心に描く姿は、こんな着飾った人形のような
 娘たちではなかった。

 セヴェリは四日前のあの日から、ソリには会っていない。

 ソリと顔をあわせれば、自分がまた馬鹿げたことを言いだしそうで会うのが
 ためらわれた。


   「陛下、ダンスばかりでは疲れましょう。今度は飲み物を手に、
    ご令嬢方とお話でもされては......」


 パルヴォが、小声で言うのを聞き、セヴェリはうんざりとして目を閉じた。

 飲み物を手に玉座をおりれば、今度はどの令嬢のところへ足を運ぶだろうと
 好奇の視線を集め、ひそひそと囁かれるだろう。

 まるで見世物小屋の珍獣だな......。


   「シャンパンでも持ってこさせましょうか」


 そう聞くパルヴォに向かって、閉じていた目を開き冷ややかな
 視線をおくるとセヴェリは言った。


   「そうだな、たしかに喉が渇いた。
    だが、飲みたいものはここにはない」


 きっぱりと言い切り、セヴェリは立ち上がる。


   「少し疲れたので、休ませていただく。皆、引き続き夜会を
    存分に楽しまれよ」


 広間に響き渡る声でそう告げると、セヴェリは部屋をでるために
 歩き出した。

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