国王陛下の独占愛
(11)
「北の隣国、ダコスの政情が不安定だというのは確かか?」
セヴェリの問いに外相が答える。
「はい、ダコスは三つの種族が集まる国。今までは我が国に
友好的な種族が権力を握っていましたが、最近、力をつけてきた
種族は、我々に対し非常に好戦的です」
外相の言葉に合議の場にざわめきがおきる。
「ダコスが戦を仕掛けてくるとは決まったわけではありませんが、
備えは必要かと思います」
その言葉を聞いていた、領相のザクロスが口をひらく。
「ダコスとの境になるムスカの砦に一度、国王自らが
出向かれるというのは如何ですかな?
隣国に対する牽制になるとともに、砦を守る兵士達の士気も
たかまりましょう」
「そうだな、長く北へは赴いていない。一度そのことを
検討しよう」
ザクロスの言葉に深く頷き、そうセヴェリは言った。
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合議の場から戻ってきたセヴェリにパルヴォが言う。
「北といえば、アミラ様がニクラス様とともに北の離宮に
いかれています。」
一週間ほど前、しばらく気晴らしに王城を離れたいとアミラ妃が
言ってきたのは覚えているが、行先が北の離宮だったとは.....と
セヴェリは思った。
北の離宮のあるベルススには、ソリの祖父がいる。
それに今日話が出たムスカの砦は、ベルススに近い。
ざらりとした胸騒ぎが一瞬湧き上がったが、セヴェリは努めて
それをやり過ごした。
下手に騒げば、クルトの居場所を知られてしまう。
焦ってはいけない。
そうセヴェリは自分に言い聞かせた。