Dragon's Dogma ~数多の伝説に埋もれる一片の物語~
翳り
年中温暖なグランシス半島だけど、場所によって気候は本当に様々なんだ。カサディスは中でも温暖で、村の父さんは上半身は簡易な飾りだけしか身に付けないぐらい。逆に蒼月塔の辺りは針葉樹ばかりで更に海からの風が強く、しっかり着込まないと耐えられないほどだ。今、歩いている月噛峠は半島のやや南部に位置するんだけど、中央山地を越えるため、標高が一気に上がる。峠付近は気温が低く、夏で肌寒い。木々も疎らで寂しい景色が続く。それから、狼などの野生生物、鳥女なんかの魔物も生息するから、大きなキャラバン以外で通る人はほとんどいない。ハイドラの首を運搬して、女騎士メルセデスさんたちと通ったのは、もう4年も前だ。
……徴募隊のみんなのこと、思い出しちゃった。蒼月塔でのこと、忘れられない。
政務官オルダスさんからの特命、眩み砦に潜む『救済』の動きを探るため、そして、因縁のアイツをぶっ飛ばしてやるために歩みを進める。とは言え、私、姉さん、トバちゃんでの女旅。気さくで気心が知れたトバちゃんがいることで、気持ちも足取りも軽い。ハーピーや狼なんて目じゃないし、女3人だと思って下心見え見えで襲ってきた山賊は、きっと逃げ道で心底後悔してるだろう。そんなこんなで峠の関所まではそれほどの苦労もなく辿り着いた。
そう言えば、ユリカともここで再会したな。確か、峠を守る兵士と口論しててさ。合流して、フィーも合わせた3人で峠を越えたっけ。フィー。今はリュックに大切にしまってある精神体。トバちゃんの話を聞いたときはびっくりしたよ。あんたは結晶だろうが、元に戻ろうが、きっとろくに返事もしないだろうけど、でも、私は早く戻ってきてもらいたいんだ。
おっと、感傷に浸ってる場合じゃなかった。仕事、仕事っと。
「すみませ……。」
「か、覚者様!」
「うわっ!な、何?」
関所の兵士に声を掛けようとした正にそのとき、後ろから声を掛けられたのには驚いた。怪訝な顔の関所兵に軽く会釈をして振り向くと、息を切らした領都の通信兵(一般の兵士より軽装なのさ。もう覚えたね)が。
「そんなに慌ててどうしたのさ?」
「そ、それが、領都が!」
「落ち着いてお話しください。領都がどうされたのです?」
穏やかで静かな姉さんの質問にも、兵士はまるで落ち着く様子がない。流石に私も不安になってきた。
「オ、オルダス様から受けられた使命は偽りの情報に乗せられたものだったのです。『救済』が占拠したの眩み砦でなく、長城砦。そして、長城砦奪還のため軍が出発した直後、手薄になった領都に魔物が現れ、甚大な被害が出ております!ポーンギルドからも応援頂いておりますが、そちらも数が少なく。」
「あっ!そ、そうなんだ。じゃあ、早く助けに行かなくちゃね!」
「……マチルダ様が責任をお感じになる必要はないと思いますが。むしろ、それは私です。とにかく急ぎましょう。」
「……?」
眉をしかめた姉さんと、キョトンとしたトバちゃん。だってさ、本当なら領都市街やポーンギルドに手練れの魔女が最低でもあと3人はいるはずだもん。
……徴募隊のみんなのこと、思い出しちゃった。蒼月塔でのこと、忘れられない。
政務官オルダスさんからの特命、眩み砦に潜む『救済』の動きを探るため、そして、因縁のアイツをぶっ飛ばしてやるために歩みを進める。とは言え、私、姉さん、トバちゃんでの女旅。気さくで気心が知れたトバちゃんがいることで、気持ちも足取りも軽い。ハーピーや狼なんて目じゃないし、女3人だと思って下心見え見えで襲ってきた山賊は、きっと逃げ道で心底後悔してるだろう。そんなこんなで峠の関所まではそれほどの苦労もなく辿り着いた。
そう言えば、ユリカともここで再会したな。確か、峠を守る兵士と口論しててさ。合流して、フィーも合わせた3人で峠を越えたっけ。フィー。今はリュックに大切にしまってある精神体。トバちゃんの話を聞いたときはびっくりしたよ。あんたは結晶だろうが、元に戻ろうが、きっとろくに返事もしないだろうけど、でも、私は早く戻ってきてもらいたいんだ。
おっと、感傷に浸ってる場合じゃなかった。仕事、仕事っと。
「すみませ……。」
「か、覚者様!」
「うわっ!な、何?」
関所の兵士に声を掛けようとした正にそのとき、後ろから声を掛けられたのには驚いた。怪訝な顔の関所兵に軽く会釈をして振り向くと、息を切らした領都の通信兵(一般の兵士より軽装なのさ。もう覚えたね)が。
「そんなに慌ててどうしたのさ?」
「そ、それが、領都が!」
「落ち着いてお話しください。領都がどうされたのです?」
穏やかで静かな姉さんの質問にも、兵士はまるで落ち着く様子がない。流石に私も不安になってきた。
「オ、オルダス様から受けられた使命は偽りの情報に乗せられたものだったのです。『救済』が占拠したの眩み砦でなく、長城砦。そして、長城砦奪還のため軍が出発した直後、手薄になった領都に魔物が現れ、甚大な被害が出ております!ポーンギルドからも応援頂いておりますが、そちらも数が少なく。」
「あっ!そ、そうなんだ。じゃあ、早く助けに行かなくちゃね!」
「……マチルダ様が責任をお感じになる必要はないと思いますが。むしろ、それは私です。とにかく急ぎましょう。」
「……?」
眉をしかめた姉さんと、キョトンとしたトバちゃん。だってさ、本当なら領都市街やポーンギルドに手練れの魔女が最低でもあと3人はいるはずだもん。