Dragon's Dogma ~数多の伝説に埋もれる一片の物語~
 コカトリスは一度強く大きく身震いをした。けれど、その喉に刃を突き立てた白銀の剣士は決して手を放さない。
 トバちゃん、矢の照準を合わせながら、
「師匠、絶対に放しちゃダメですよ。次に上空に上がられたら逃げられちゃいます。」
「放す気など、毛頭、ありません。このまま……墜とします。」
 自暴自棄になったのか、最後の悪足掻きか、コカトリスは高く飛び上がろうとする。トバちゃんが連続して何本もの矢を射るけど、姉さんを気にしてか足や翼の先を射抜くだけで、効果的なダメージを与えられない。そのままコカトリスは民家の屋根より高く上昇すると、地面に向かって一気に降下した!
「し、師匠!」
 巨大な怪鳥の落下点にあった木造の家屋何棟かは一挙に半壊。姉さんは!?だが、瓦礫を巻き上げ、再び飛翔するコカトリス。その喉元には……姉さんがいない!?
 やっぱり姉さんは伊達じゃなった。聖剣を手放し、怪鳥の背中側に回っている。そして、腰にあった護身用の短刀を後ろ手に抜き、怪鳥の翼の根元に渾身の力で突き立てた。どす黒い血飛沫が上がる。怪鳥は姉さんを振り落とそうと宙で暴れ狂うんだけど、その魔物の血だらけの喉を5本の矢が同時に貫く。そう、喉はヤツの弱点。姉さんの剣とトバちゃんの矢、どちらもコカトリスの生命を確実に削っている。ただ、手負いの怪鳥は尚も激しく暴れ、そこいらに激突し、街を崩壊させていく。
「師匠、こいつ、化け物みたいです!」
「魔物相手に何を今更!」
「わぁ、こっちへ来るなぁ!し、師匠、喉以外に弱点、ありましたっけ?」
「コカトリスには雷です。ただ、トバと私では……何!?」
 白銀の剣士は何かに気付くと、短刀と怪鳥から手を放し、半壊した家屋へ自ら飛び降りる。次の瞬間、更に上空より紫電が怪鳥を襲った。轟音が喧騒を劈く。怪鳥は大きくビクッと震えると、空中で動きを止め、そのまま地に堕ちた。
「師匠ぉぉぉ!」
「姉さん!?」
私が駆けつけたのは、そんな時だった。
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