Dragon's Dogma ~数多の伝説に埋もれる一片の物語~
覚者
 手を着き、身体を起こし、竜が飛び去った空を見上げた時の私は、どんな表情だったんだろう。きっと酷い顔をしてたと思う。
 って、半壊した長城砦の屋上が急に瓦解し始めた!私は慌てて膝を着き、立ち上がり、尖塔があったのと逆の方へ走り出した。まだ崩れてない方だ。前には道なんてない。でも、先のことなんて考える余裕はなかった。とにかく瓦解していく部分から逃げることだけで精一杯だった。
 あっ!っと思った。左足が蹴った地面に反動がない。数多の煉瓦が奈落へ落ちていく。そして、私もバランスを崩し、足下に広がる暗闇へと吸い込まれる。
 ──最期の瞬間まで、瞳を逸らさずいよう。いつからかな?そんなことを思ってたのは。でもね、私は私の力でここにいる訳じゃないから、せめて私の道の尽きる時は目に焼き付けておきたいんだ。
 だから、あのフワッとしたときの気持ち悪さも苦にならなかった。感覚的には数分間だけど、本当は恐らく一瞬の出来事。そして、私の目の前に黒い影が過る。これが死神の影?黒呪島で倒した奴より余程現実的だな。
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