あの日ぼくらが信じた物
 裏の新興住宅地に引っ越して来て、新年度から遠泉小学校の4年に転入した、確か……『鈴木』さんって子だっけ。

通学班は違うけど、色が白くて目がクリッとまんまるで、笑うと並びの良い綺麗な歯が、桜色した薄い唇からちょこっと見えて、背なんか凄く小さくて……。

エラく詳しいじゃないかって? ……そ、そうですよ。学年替えの初日から気になってたんですよ! ええ、同じクラスの『鈴木光代スズキミツヨ』さんです。良く知らない振りをしてたんですよっ!!

でも……、あの子が一体ウチになんの用だったんだろう。引っ越しの挨拶にしては遅過ぎる。何せもう5月に入ろうとしているのだから。


「お客さん、何だったの?」


 ぼくは何故だか後ろめたい気持ちになって、母の方を見る事も出来ずに聞いた。


「いいよなぁ、おまえらは。勉強出来てさ!」


 母の台詞にぼくは一瞬自分の耳を疑った。それはあの『喋るカラス』が言ったことそのままだったからだ!


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