あの日ぼくらが信じた物
「ヒドイよ。大人だって昔はぼくらと変わらなかった癖にね!」


 ぼくがみっちゃんに言った時。丁度運悪く風が凪いで、ぼくの陰口は大人の皆さんへ丸聞こえになった。


「なんだって? あきらぁ、おめえだけ外におん出されてぇのか? 壁の方に向いて黙って寝ろ!」


 父は多分、自分の威厳を見せ付けたかったのも有るんだろうと勘繰って、ぼくは「は、はい」と一言返すとみっちゃんに背を向けておとなしくした。


「あきらくんは偉いですね。光代も早く寝ろよ?」「いやいや、子供は親が居てこそですから」


 みっちゃんパパと父の会話を聞いて、ぼくの『父ちゃんの威厳向上大作戦』は成功に終わったことを確信した。

当の大人達は子供もそれなりに気を遣っているなんて知りもしないんだろうけど。


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