あの日ぼくらが信じた物
「はい、外したわよ? 私の、スポーツ用だから、しっかり胸を押さえ付けてあるの」


 みっちゃんはぼくの手を取って自分の胸に導く。それは凄く柔らかくて、この世の物とは思えない微妙な弾力でぼくの手のひらを押し戻した。


「むむ、みっちゃん。何? ぼく滅茶苦茶気持ちいいんだけど」


 ぼくがそう言うとみっちゃんはとたんに真っ赤になって、小さい声でポツリと「……も……」って言った。


「なに? どうした? みっちゃん」


「私も気持ちいい。なんだか変な気分なの」


 みっちゃんの顔は眠たそうにぼくを見返している。いや、それとは違う。

その表情は今まで見たことも無い位にぼくを見とれさせていて、その時『セクシー』ってこのことだって体感したんだ。


「みっちゃん!」


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