あの日ぼくらが信じた物
「はは、あれねぇ。あきらが話そうとしてたこと。カラスが喋ったって話」

「だから何でそれを母ちゃんが?」


 また吹き出して少し笑うと、「もうお腹が痛いわ、いいから黙って聞きなさい」と質問を禁じられる。


「あれはね、光代ちゃん、ああ、鈴木さんね? その光代ちゃんが言ったんだって!」


 ぼくと同じように窓を眺めていた彼女は「あのカラス速い」と言った言葉を聞いていた。

一緒にカラスを目で追っていたら「いいよなぁ、おまえらは。空を自由に飛べてさ」とぼくが呟くのを更に聞いて、冗談のつもりで返答したらしい。

そうしたらあまりの騒ぎになってしまったのでぼくに言う事も出来ず、家に帰ってお母さんに相談したんだそうだ。


「なんだよ! そういうことだったのか!」


 ぼくはからかわれたことを怒るより、鈴木さんと繋がりが出来たことが嬉しかった。


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