あの日ぼくらが信じた物
「うう~ん。カナダの友達とも打ち合わせが有ったんだけど、まあいいわ? 明日にしましょう」


 それは多分、ぼくに教えてくれない秘密についての談合だ。少しヘソを曲げたぼくは、嫌味っぽく言い放った。


「どうせぼくには関係無いことなんでしょ? じゃ、明日は付き添いってことで、ただ付いて行けばいいわけだ」


「すぅぐひがむんだからっ! あきらくんも主役なのよ? 関係ないわけ無いでしょ?」


「主役なの? それなら教えてくれたっていいのに! もう知らないんだからねっ」


 ぼくは『あとひと押し』とそっぽを向く。それが良きに付け悪しきに付け、ぼくとみっちゃんの間に隠しごとが有るのが気に入らなかったんだ。


「解ったわよぉ、教えるわよぉ。でも時間が無いからまた明日ね?」


 みっちゃんは防寒着をそそくさとバッグにしまいながら言う。


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