あの日ぼくらが信じた物
「今更ながらに凄いね、この石は!」


 ぼくは改めて石を眺めた。ここの所頻繁に使っていたせいか、心なしかすすけたように灰色掛かって見える。


「それはそうと……みっちゃん。さっきの話だけど……」

「う、うん」


 彼女は思い出したように真っ赤になった。川田さんはバッグをごそごそと探っている。


「ぼくは18才になったらみっちゃんを正式にお嫁に貰う。だからそれまで諦めずに生きて欲しい」


 川田さんは何かを引き摺り出そうとしていた手を止める。


「でもあきらくん……」

「けど、オーロラの下で結婚式なんてそうは無い事だから……ぼくのお嫁さんになってくれ、みっちゃん!」

「……あ、あぎだぐん……グズッ……ウェエエエン、ヒクッ」


 ぼくのプロポーズを聞くとみっちゃんは、昔のようにぐしゃぐしゃの顔で号泣していた。


「折角ウェディングドレスを用意してくれた川田さんにも、場所を提供してくれる中山さんにも悪いしね」


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