あの日ぼくらが信じた物
 ぼくは川田さんにウインクしながら言うつもりが、両目をつぶってしまっている。


「アハアハ、なんだバレてたの? あきらくんウインク出来てないし、アハアハハハ」

「久美ちゃんにドレスとスーツ、用意して貰ったのよ。あきらくんのサイズは難しかったみたいだけど」

「どうせぼくは小さいですよ!」

「それがみっつん、スーツね……」


 川田さんが背中を丸めてばつが悪そうに目配せする。やっぱりぼくのサイズは無かったんだ。


「はは、でもいいじゃない。ぼくは式場から、あわや人の物になってしまいそうなみっちゃんを略奪して、2人だけの結婚式を挙げるんだ。

 だからぼくは普段着」

「素敵、なんだか映画みたい」


 頬を染めて溜め息混じりに溢すみっちゃんは、花嫁ならではの切ない程に美しい輝きを放っていた。


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