あの日ぼくらが信じた物
 みっちゃんが取り出したのは見覚えのある電光掲示板。これは銀行の……。


「みっちゃんこれは」


「そう、神社に行く途中で通るでしょ? ポラロイドで撮ったのよ」


 そこには今日の日付けと出発前の時刻が写った写真が有った。


「これでこの時間に帰れるでしょ?」


「みっちゃん頭いいな!」


 みっちゃんはちからこぶを見せ付けて胸を張る。ウェディングドレスから胸が零れてしまいそうだ。


「やれやれ、さっき迄のしおらしいぼくの花嫁さんはどこへやら」


 部屋の温度が上がってきたのでぼくらの気持ちも活動的になったみたいだ。


「じゃあみっちゃん。ゆっくり結婚式としゃれこみますか」


 ぼくは良くも知らない大人の言い回しを使って照れ隠しをする。


「うん、あきらくん」


 ぼくらは手を取り合って雪原へと降り立った。


「わぁあっ! 綺麗!」


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