あの日ぼくらが信じた物
 みっちゃんの病気は一進一退していて、彼女の頑張りも有って急激に悪くなることは無かったけど、誰の目から見ても日一日とその命の炎が弱まっていくのは明らかだ。

あの石も、最近ではすっかり灰色に変色してしまって、病魔の進行を報せているかのようだった。



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 そして明日が入学式という日に、ぼくは彼女に言った。


「みっちゃん、今日は太陽に行かないか? いっそ2人して燃え尽きてしまおうよ」


 彼女1人を死なせる位なら、ぼくも一緒に消えて無くなりたかったんだ。


「駄目よあきらくん! なんてことを言うの?」


 綺麗な彼女が本気で怒ると怖いのは何度も経験して来たことだけど、今回ほど静かで冷たく、悲しげな瞳を見たことは無かった。


「私は生きたくても生きられない。あきらくんを道連れになんかしたら、私は誰の思い出の中に生きればいいの?」

「解った。ゴメン、俺が悪かったよ。頑張るよ」


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