あの日ぼくらが信じた物
 病院から家に帰り、放心状態のままタオルケットにくるまった。その閉鎖された空間でぼくは、自分が生きていることさえ実感出来ずにいた。

 さっきまでみっちゃんと吸っていた空気を、今はぼくだけが吸っている。

さっきまで握り返してくれていた手は、もう冷たくなって動かない。

さっきまで信じていたみっちゃんとの明日は、未来永劫に閉ざされた。

あんなに心配してくれていた川田さんにも、再会を誓った中山さんにも、もう2度と会うことは無いだろう。

だってこの石が再び輝くことは、もう無いのだから。


「でもみっちゃん。みっちゃんはぼくの中で生きているよ?

 いやそれだけじゃない! みっちゃんと知り合った人全員の中に、綺麗で聡明で優しい鈴木光代は、永遠に生き続ける!」


< 223 / 236 >

この作品をシェア

pagetop