あの日ぼくらが信じた物
 ぼくは2人で行った先々の、まだ整理してない写真をパラパラとめくった。

 全身ダブダブの衣装を着て、変な帽子を被ったみっちゃんがスプレー片手に大立ち回りをしている写真。


「ははっ、みっちゃんガニ股だ。かっこわりぃ」


 第2の故郷バンクーバーの公園ではしゃぎ回っている姿。


「ああ、偶然写ってるのこれ、川田さん家だ」


 オーロラの下でドレスを着て、満面の笑みでピースしているみっちゃん。


「花嫁姿でピースはないだろ、みっちゃん。なぁみっちゃん……みっちゃん……」


 いくらぼくが呼び掛けても、写真のみっちゃんは答えてくれない。でもぼくはみっちゃんを死なす訳にはいかないんだ。

答えが返ってこないと解っていても、ぼくの中で生きているみっちゃんと、こうして触れ合っていなければいけないんだ。


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