あの日ぼくらが信じた物


 そう

 あの日から

 ずっと輝く事の無かったこの石

 でも幻じゃない

 確かな2人の記憶……



「パパ! 早く早く!」


 階下から娘が呼んでいる。


「今行くよ」


 ぼくはまたその石を、引き出しの奥の奥迄しまい込んだ。


「あきらくん、まだぁ?」

「すぐ降りるって!」



彼女が死んだ次の日───────



 友引の昨日を避けて、みっちゃんの通夜は今日行われた。


「あの……」


 上品そうな老婦人が声を掛けて来た。近所の知り合いでは無い、初めて見る顔だった。


「あの、貴方があきらくんですか?」


 それは何か懐かしいような、とても親しい間柄のような……そんな印象の喋り方だったので、あからさまな不信感は見せないで、ぼくは微笑みを返していた。


「はい。ぼくがあきらですけど、どうかされました?」


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