あの日ぼくらが信じた物
 みっちゃんの病気の進行と共に黒ずんでいった石。ぼくはそれを見る度に心が痛んでいたんだ。


「この石は『思い出石』と言って、思い出の場所へ帰る為の石なのよ」


 おばあちゃんの喋り方は聞けば聞く程みっちゃんに似ていて、声さえしわがれていなければ彼女と話しているようだ。


「場所だけの移動ならいつまでも使えるんだけど、時を超えると老化してしまうの」

「ぼ、ぼくらは別に……いつも色んな場所に行ってた、だけで……」


 ぼくは石を老化させてしまった元凶が自分たちなんだと責められている気がして、しどろもどろになって答える。


「フフフ、いいのよ。私が光代に時差のことまで教えなかったんだろうから」


 おばあちゃんの微笑みはやはり、みっちゃんのそれを彷彿とさせる。


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