あの日ぼくらが信じた物
「それであきらくん」


 おばあちゃんはシワシワの顔をぼくに近付ける。みっちゃんの大きな瞳と薄い眉はここからの遺伝だったんだ。


「は、はい」

「あきらくんは光代のことが大事だった?」


 おばあちゃんの手はいつの間にかぼくの手に重ねられている。そしてその瞳には心の奥底まで見透かされてしまいそうな力が宿っていた。


「勿論大事です。これ迄も、これからも」

「フフフ。でも光代はもう居ないのよ? どうやってこれからも大事にしていくの?」


 意地悪な所もそっくりだ。みっちゃんパパは凄くいい人だから、ここは隔世遺伝だろう。


「それは……これからもずっとみっちゃんの思い出を大切に……」

「そ・ん・な・ことより!」


 おばあちゃんはぼくの手をツンツンと引っ張って言葉を遮った。


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