あの日ぼくらが信じた物
「でもさ、みっちゃん日本語上手だよね。向こうではどうやって勉強してたの?」


 今となっては余り珍しくも無くなった帰国子女だが、当時外国に住んでいたなんてことになれば、根掘り葉掘り聞きたくなるのも当たり前の庶民感情だ。


「リトル東京って呼ばれてる日本人居住区が有るのよ。私達家族は殆ど日本語しか使わなかったわ?」


 もしかして外国語もべらべらなんじゃないかと少し期待していたぼくは、がっかりを悟られないように話題を写真に戻した。


「これって家族の写真はないの? お父さんはどんな人なの?」

「有るけど、家族のアルバムは応接間なの。喉も乾いたし、下に行きましょうか」


 また広い階段を下って1階に降りる2人。やはり建ったばかりの家は、どこもかしこもが綺麗で気持ち良い。


「あ〜あ、くつろいじゃってぇ」


 応接間に戻ると、抱え込んだ膝に顎を乗せ、機関銃のように喋りまくる母。スカートなんだからもっと気を付けないと駄目だろう!


< 27 / 236 >

この作品をシェア

pagetop