あの日ぼくらが信じた物
「あきらくぅん。喉乾いたぁ、お茶頂戴」


 頂上に近くなり道の険しさが増したことも有って、さっきからみっちゃんは我がまま放題だ。


「ママに水筒持たせちゃうからだろ?」


 そう言いながらもぼくは、自分の水筒のフタに麦茶を入れて渡してあげた。


「ありがとう! あきらくん優しいから好きっ」


 にこにこしながらお茶を飲み干すみっちゃんは、どんなアイドルだって敵わない程可愛かった。


「光代ぉっ頑張れぇっ! こっちは景色がいいぞぉっ?」

「あきらぁっ、しっかり光代ちゃんを助けてやるんだぞぉっ!」


 大人達はこんないたいけな子供2人を残してさっさと頂上へ登ってしまった。父親達は曲がりなりにも声を掛けてくれたのでまだいいとして、母2人は話が盛り上がっているのかこっちを見ようともしない。


< 31 / 236 >

この作品をシェア

pagetop