あの日ぼくらが信じた物
「おはようございます」


 そして待ち合わせの駐車場。みっちゃん一家も準備万端だった。


「ああ、おはようございます。お? あきら君、来る気になったんだね?」


 ぼくは気恥ずかしくて俯いていたけど、ちらっとみっちゃんの顔が見えた。

みっちゃんもまた俯いていて、しかもあのハイキングの時被っていたカウボーイハットだったから、その表情は窺えなかったけど。

今日は車で川原まで行く。ウチのペンキ臭いワゴン車で行くのもナンなので、みっちゃんちの車に便乗させて貰う事になった。


「ホント鈴木さん、悪いわねぇ」


「いいのよ。趣味でこんなへんちくりんな車に乗ってるんだから」


 みっちゃんちの車はドイツ車だった。幼稚園バスを小さくしたようなそれは、早く走るのは苦手そうだったけれど、顔がのっぺりととぼけた感じで実に楽しげな車だ。


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