あの日ぼくらが信じた物
「ねぇ、行ってみない?」


 ぼくはみっちゃんに同意を求めた。みっちゃんは少し迷っていたけど、今日は習い事も無い筈だ。

予想通り返事はイエスだった。


「ほら、あの黄色い家。あれ恭子のだぜ?」


「そうなんだ。伊藤さんとは余り喋った事ないな」


 そんなことを話しながら歩いていると、農道の突き当たりから森に入る一本道との分岐に出た。


「ここ、人のウチなんじゃないの?」


「いや、多分違うよ」


「怒られたら嫌よ?」


 そこは狭い路地だったが、何軒も民家が軒を連ねている。私道ではあるだろうが人の庭ではない。


「大丈夫だよ、行ってみよう」


「うん」


 ぼくらはおっかなびっくりで歩を進めた。



───────



 昼なお暗いその森には、冷蔵庫の残骸や錆びて朽ち果てた自転車等が捨ててあり、秘密基地に出来そうな残材も積んである。


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