あの日ぼくらが信じた物
 鼻水を袖でしごきながらぼくは、みっちゃんが楽しそうにしているのを見ていた。


「ねぇ、あきらくん」


「ん?」


「ここでこの子飼わない?」


「そんな無理無理! 俺触れないもん」


「あきらくんはいいわよ見てるだけで。あとは給食の残りで協力してくれれば」


 今は衛生上の問題から持ち帰る事が出来ない給食の残りも、当時は寧ろ持ち帰りを奨励されていた。

だけど育ち盛りの健康優良児のぼくに給食を残せなんて、みっちゃんも随分酷なことを言うものだ。しかもその食い扶持はよりにもよって大敵のアレルゲンに供給されるというのに。



翌日───────



 ぼくらは日課となっていた寄り道もしないで、例の森に来ていた。


「こんなに小さいと、パンなんか食べられないんじゃないかな」


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