あの日ぼくらが信じた物
 ぼくはランドセルに下げたパン袋からそれを取り出してみっちゃんに渡す。

 雅行から奪ったパンも一緒だ。


「あ、これ五十嵐くんから盗ったやつだ。あきらくんも意外と極悪人よね」


 その悪の総帥は貴女です。王女様。


「ほぉら、美味ちぃでちゅよ、ニャン子ちゃん」


 目尻をこれでもかと下げ、デレデレの赤ちゃん言葉で子猫の面倒をみるみっちゃん。


「あれ? お腹ちゅいてるでしょう?」


 でも子猫はパンから顔を背けてしまう。やっぱりまだ固形物は食べられないんだ。


「ほらぁ」


 ぼくがそう言うとみっちゃんは悲しげな顔を向けながら哀願する。


「あきらくぅん。このままじゃニャン子ちゃんが死んじゃう」


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