あの日ぼくらが信じた物
 するとぼくらの目の前を何かが通り過ぎた。


「マーガリン!」


「本当だ。ヤツだ」


 薄汚れてはいるが、あの90°に曲がった尻尾は間違いなくマーガリンの物だった。

 森を囲んでいる原っぱの、小高い盛り土のてっぺんでやつはぼくらを眺めている。



  ナァァァァオ



 するとまるでお礼を言うかのように、マーガリンは頭を下げながら鳴いた。


「良かった! あきらくん。あきらくんの言った通りだった」


「ね? 猫は野生に近いから、の、野良でもやって行けるのさ」


 マーガリンが生きてるなんて思いもしなかったぼくは、けれどもうまい理由を見付けて相槌を打つ。


「おいで、マーガリン。ほら、みっちゃんですよ?」


 腰を屈めて身体中から優しいオーラを放ちながら、みっちゃんが腕を拡げる。


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