あの日ぼくらが信じた物
「鈴木さんちに負けないように、しっかりテントを張るんだ。来い、あきら」


「父ちゃん。そんな張り合わなくても……」


「何を言ってるんだ! 父ちゃんはな、ウルフスカウト(ボーイスカウトの前身)時代からテント設営が得意だったんだ。あんな最新型なんかに負ける訳にはいかんっ!」


 お金が無くて中古のテントを購入してきた我が家のそれは、南極越冬隊なんかが使うようなカラフルなテントを持ってきたみっちゃんちのそれに比べるとかなり見劣りがしたけど、その構造の複雑さに「台風が来たら生き残るのはこっちだ」なんて優越感が持てる程ガッシリしていた。


「よし、フライシートをピンと張って終了だ。どれ、鈴木さんちは、と……」


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