お姫様は月に恋をする

トントン--------

部屋のドアを誰かがノックする。

「どうぞー」

キィッと重たい銀縁のドアが男性の低い声と共に開いた。

「おはようございます」

この男性、シュガー邸のノアール専属執事フルール、長身で細身だ深く青い瞳は冷たい印象を受ける。

「なんだか今日はいい事がありそうだわぁ」

フルールが紅茶を用意していると、太陽が昇る雲ひとつない青い空が映る窓を見ながらノアールが呟くと。
フルールも窓に一瞬目を向けすぐにティーカップを見た。

「朝食はパンケーキにサワークリームがいいわ、ドライフルーツ入れたのよ」

「御用意いたします」

やった!と無邪気にぴょんっと跳ねて執事の淹れた紅茶を手に取りクルクルと回りながらティーカップに口お付けた。

「お嬢様、お行儀が悪いです」

「はいはい」

平和な朝のひと時
18歳のノアールはこの平凡な幸せが永遠だと思っていた。




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