無題
俺は今日、父さんの目を盗んで家出をした。

俺はさっきも言ったように成長が早かったから、誰も行方不明の子だとはわからない。

なんせ昔の話だ。

誰も覚えてはいないのだ。

俺は昔の記憶をたよりに、本当の両親の元へ向かった。

懐かしい景色。

小さい頃のことだがやはり記憶にはあるようだ。

隣の家の女の子とよく遊んだなと、古い記憶が蘇る。

すると、遠くから俺の本当の両親が歩いてきた。

なんとなく恥ずかしいような怖いような気持ちがしたので建物の影に隠れた。

女の子を連れていた。

俺の、きっと妹なのだろう。

俺がいた頃にはいなかった。

三人とも楽しそうだった。

もう俺のことなんか忘れているようだった…。
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