SignⅠ〜天狗のしるしと世界とあたし

それが今、確かな実感として、あたしの心を切り刻む……


あたしはたった今、思い出せたのだ。


紛失していた、感情を。


"悲しい"という感情を……



「……はあ、」


夜の闇に、このままのまれたかった。

冷たい体はもう震えもしない。


「……あ、 ……あた、し 」


その時、車のヘッドライトがあたしを照らした。


"キキーッ!! バンッ!"


「「 美空っ!! 」」


車から二人の男が慌ただしく駆け寄ってくる。


一樹と、黒木……


「 ひいっ! みくっ!!」

「……っ! どうして!」
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